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不意に、冷たい感触が額に乗っかってきた。
ひんやりと染み入る感触に、まるで夢から覚めるような心地で目を開けた。
――…………目を?
視界に、木造の天井の梁が入ってきた。
次いで、遠くに聞こえていた蝉の音が戻ってきた。
最後に、自分が今まで寝ていたのだという事を理解できた。
……そうか、今まで寝ていたのか。
だから、あんなハチャメチャで訳がわからない事が次々起こったのか。
……まぁ、でも甘い物が食いたいのは実際のようだった。あれかな、暑いところで暑い物が食いたくなる心理と似ているのかな?
そんな事を、ふと思った。
風が、輝弘の体を優しく撫でていた。
目線だけで右手を見ると、扇風機が回っていた。
汗が乾き、そのたびに体温が少しずつ落ち着いていく。
「あ」
その中に、カセットテープのあの歌が流れている事に気付いた。
その心地よさに少し心を奪われ、そして、頭の上に乗っているものに気付き、手で触れた。
氷袋だった。
「気がついたかな? 寝ぼすけさん」
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