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だけど僕のそんな思いは虚しく女性は、「それじゃあね」と両腕を大きく広げ帰ってしまった。その時の表情に僕は驚く。とても悲哀に満ちていたから。
――――それからも僕はいつも通り森林地帯で安らぐ毎日を送った。もしかしたらあの女性にまた会えるのではないかという期待は捨てきれなかったが。
あの出会いからどれだけたっただろう。そんなことを思いながらいつものように森林地帯に到着したある日。高木に寄りかかっている女性がいた。僕は満面の笑みを浮かべ、そこへ向かう。
「未だにここに来ているのね。良かったわ、どうしてもお礼が言いたかったの」
「お礼?」
この女性がここに来た理由はどうでもよく、また会えたことが僕にとってはこれ以上ない喜びだ。
「実はね、前にここを訪れたのはとあるメールがきっかけなの。あの時は何をやってもうまくいかず、人生に嫌気がさしていたの。藁にもすがる思いでメールにしたがってここに来たらあなたがいて……その時の言葉が私を救ってくれた。『localisation』はね、パパから慰めて貰うときによく言ってくれたの。小さい頃に亡くなっちゃったんだけどね。本当にありがとう。あの時ここに来なかったら私はこの世を去っていたかもしれない」
そう言い、女性は深々とお辞儀をする。その後帰ろうとした女性の肩を僕は掴む。僕にしては驚くぐらい大胆な行動だったがどうしても伝えたかった思いがあった。
「あの! 僕あなたのことが好きです! だから……あの……」
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