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『臨時点検につき、運行休止中。階段をご利用下さい』と記した貼り紙がしてあった。
今の僕らには、死刑宣告にも似た通知だった。太陽に続き、どうやら偶然の神様とやらとも、僕は仲良くなれそうにない。
止むを得ず、二人して階段を利用する。
九階分の段差を、気の遠くなるような時間をかけて上る。日陰ではあったが、幅が狭いので蒸し暑くてたまったものじゃない。
小学校の頃はサッカーをやっていたが、高校じゃ帰宅部だ。
ちなみに、僕の四段後ろで息を切らす幼馴染みは茶道部だ。
音痴とはいわないが、どちらかといえば運動には向いていない。
無事最上階へ到着した頃には、僕らはフルマラソンを走ってきたのではないかと思うくらいの汗をかいていた。
つくづく、今日は厄日だ。
「き、決めたぞーーー早紅葉・・・」
「な、なに・・・を、よ」
「僕はーーーこれからいつ、いかなる時も・・・四チャンでやってる、越水アナウンサーの朝の星座占いは、欠かさず見ることにする!!」
「・・・何の話よ」
早紅葉の呆れたと言わんばかりの溜め息が溢れた。暑さでやられてしまったのだろう、我ながら何を言ってるのか不明だ。
こうして僕らは、学校の校門から数えておおよそ四十分、階段を上がるのに五分の計四十五分をかけて、陽ノ宮 翳の部屋の前へと到着した。
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