第一話 陽ノ宮 翳 ~ヒノミヤ カゲリ~

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「九0五号室、陽ノ宮。うん、ここで合ってるね」 再度指でなぞるように確認する早紅葉。 そのままインターホンを押し、ピンポンというお決まりの音が室内に響く。 応答はない。 もう一度、早紅葉がインターホンを鳴らす。 やはり反応がない。 「留守じゃないのか?」 「うん、やっぱりいないのかな」 やっぱりとは、どういうことだ・・・ ? 「あのね由貴ーーー私さっき、先生達が何度か訪問に行ったって話したじゃない。あれって結局、誰一人として陽ノ宮さんに会えなかったみたいなんだよね」 誰も、一度も。 「なんだそれ、全部留守だってことかよ」 うん、と頷く早紅葉。 そうなるとつまり、考えるに値しない想像だったけど、本当に失踪でもしちまったってのか。 いや、両親には口頭で連絡がついているわけだし、その線は薄い。 後に山中の林の中で発見されるとか、目を瞑りたくなるような事件性はとりあえず無いだろう。 ならば、他校の悪い連中と付き合っていて、昼夜問わず遊びまわっているとか。 はたまた、誰かに恐喝やストーカーでもされていて、部屋から一歩も出られなくなっているのかも。 駄目だ。 どう考えても決定的に納得いかないし、縁起の悪い思考ばかり働いてしまう。 僕が知る、学校の誰もが知る彼女は、そんなやつでは絶対にない。 ではなんだ? 陽ノ宮が学校に来なくなり、人との接触を頑なに拒む理由は・・・・。 がちゃりーーー。 突然ドアが開いた。正しくは、鍵の有無を確かめようとした早紅葉がドアノブを回したところ、偶然にも開いただけということだった。 鍵はかかっていなかったのだ。
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