8人が本棚に入れています
本棚に追加
「九0五号室、陽ノ宮。うん、ここで合ってるね」
再度指でなぞるように確認する早紅葉。
そのままインターホンを押し、ピンポンというお決まりの音が室内に響く。
応答はない。
もう一度、早紅葉がインターホンを鳴らす。
やはり反応がない。
「留守じゃないのか?」
「うん、やっぱりいないのかな」
やっぱりとは、どういうことだ・・・
?
「あのね由貴ーーー私さっき、先生達が何度か訪問に行ったって話したじゃない。あれって結局、誰一人として陽ノ宮さんに会えなかったみたいなんだよね」
誰も、一度も。
「なんだそれ、全部留守だってことかよ」
うん、と頷く早紅葉。
そうなるとつまり、考えるに値しない想像だったけど、本当に失踪でもしちまったってのか。
いや、両親には口頭で連絡がついているわけだし、その線は薄い。
後に山中の林の中で発見されるとか、目を瞑りたくなるような事件性はとりあえず無いだろう。
ならば、他校の悪い連中と付き合っていて、昼夜問わず遊びまわっているとか。
はたまた、誰かに恐喝やストーカーでもされていて、部屋から一歩も出られなくなっているのかも。
駄目だ。
どう考えても決定的に納得いかないし、縁起の悪い思考ばかり働いてしまう。
僕が知る、学校の誰もが知る彼女は、そんなやつでは絶対にない。
ではなんだ?
陽ノ宮が学校に来なくなり、人との接触を頑なに拒む理由は・・・・。
がちゃりーーー。
突然ドアが開いた。正しくは、鍵の有無を確かめようとした早紅葉がドアノブを回したところ、偶然にも開いただけということだった。
鍵はかかっていなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!