第一話 陽ノ宮 翳 ~ヒノミヤ カゲリ~

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早紅葉ーーー早紅葉 時雨(サクハ シグレ)。 この季節感が全く合っていない名前の女子が、僕の幼馴染みである。 家が向かい側にあるという典型的なパターンで親同士が仲が良く、自然に僕らも小さい頃から遊ぶようになっていた。 当たり前のように幼稚園から義務教育の間は登下校も一緒であり、僕は記憶にないが、幼稚園のお昼寝の時間は、よく一緒の布団で寝たこともあったらしい。 忘れておいたままが良かったな。 人物像は真面目を絵に描いたような優等生で、飾り物もしないし髪も染めない。 あまり髪を伸ばさないのは癖っ毛が目立つのが嫌だかららしいけど、エクステなどのお洒落な雑貨にも手を出さず、流行り物には見向きもしない。 退屈なほどに学生という肩書きを維持し続けている骨董屋の美品みたいな女子だ。 そこそこ頭がいい事もあり、親の話では県外の難関校へ進学するなんて話があった。 中学を卒業し、地元の高校へふらふらと進学した僕は、これであの小姑みたいな幼馴染みの呪縛から解放されると期待していたのだが、安息は一時に過ぎなかった。 入学式の朝、同じ高校の制服を着た彼女が、玄関から出た僕を待ち構えていた時は度肝を抜かれた。 おっと。 勘違いして頂きたくないが、僕はとりわけ早紅葉のことが嫌いというわけではない。 ただ、ちょっとばかり僕に対しての世話焼きというか、お節介とやらが過剰だと思うのだ。 世間的に見れば、面倒見がいいと評価されるかもしれないが、僕には迷惑この上ない。
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