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「お…俺の…負けだ…」
クラスメイトはそう言い倒れる。
殺傷力を封印された武器は、モンスター以外の存在を殺すことができなくなる。しかしその武器の攻撃を受け続けた場合、疲労が蓄積され、やがて動けなくなる。
負けたクラスメイトはフラフラになりながら、グラウンドに引き返していった。
ジュライは彼以外にも、既に3人クラスメイトを倒していた。
「(モルガナは、まだ闘ってるだろうか?)」
ジュライはモルガナが気になった。彼女はスワン・デネブの姉の娘、つまり姪っ子で、魔女のはしくれとはいえ、塔の守護を任されるほどの実力はある。闘うことになれば強敵になるのは、間違えない。
「(それに…)」
サリアのことも気になった。結局昨日の出来事は何だったのだろうか?
今朝、教室にいた彼女に聞こうとしたが、ここぞというところで、聞く勇気が出なかった。
そのとき、何か聞こえた。女性の悲鳴だった。
「モルガナの…悲鳴だ!」
ジュライは悲鳴が聞こえた方に、慌て走り出した。
驚愕の光景だった。
「モルガナ!?」
モルガナがボロボロで、横向きに倒れていた。そばにサリアが弓を持って立っており、モルガナの周りには矢が散乱している。
サリアが弓を、駆けつけたジュライにむける。彼女は無表情だが、目から殺気を感じる。
「次はキミかい? 昨日の青いの」
「(間違えない、コイツがモルガナをヤったんだ!)」
ジュライは剣を構え直した。
「お前、本当に何モンだよ!」
別にモルガナを倒された恨みはない、ジュライはただサリアの正体が知りたかった。
「キミには昨日、結構助けられたから教えてもいいかな? どーせ言っても信じてもらえないし」
サリアはそう言うと目を細め、少し間をおいて再び言った。
「天使だよ、熾天使と言ったほうがいいか」
ジュライは彼女の返答に混乱した。
「嘘だろ? だって天使は物語に出てくる…」
目の前にいるクラスメイトが天使? 信じられない話しである。
ジュライはあまり、信仰心がない。祈るときといえば、困ったときの神頼みくらいだ。だから尚更だった。
そのとき、終了のベルが響いた。
後ろから聞こえたベルの音に気をとられ、ジュライはサリアから目を離した。
目線を戻したときには、既にサリアは消えていた。
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