0人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後、ジュライは昼休み中に意識を取り戻したモルガナといっしょに、夜明けの塔にむかっていた。
塔までの道(塔は学校の隣だが、前述の理由で結構歩く)を歩きながら、モルガナはジュライにたずねてきた。
「ねぇ、ジュライ君。あの授業以降サリアちゃん見ないけど、どうしたの?」
「ああ、お前午後まで気絶してたんだっけ? オレも授業のあと、見かけないから気になって、アンタレス先生に聞いたんだけどさ、転校後の手続きとかで、デネブ校長といっしょに市役所に行ってるらしいぞ。つか、あんなにボコボコにされたのに、とくにアイツに警戒とか、恨みとかないんだな、モルガナ…」
「むしろ逆よ。すごい強くて、なんか闘っているときのサリアちゃんかっこよくて、いっきに好きになっちゃった! もっとサリアちゃんのこと、知りたいなぁ」
「(知りたい…か)」
ジュライはますますサリアのことが、わからなくなっていた。
昨日の出来事に加え、今日の自分は天使だという発言。それに昨日見せたあの弓さばきと、モルガナを降した実力。あの強さは、普通の人間ではない。
白い女性のことも謎のままで、あの身のこなしと召喚術からして、彼女も普通の人間ではないのはたしかだか、結局彼女は何故塔に侵入したのか? そもそも何者なのか? 何故あの場にサリアは現れて、何の躊躇もなく彼女を攻撃したのか?
気を紛らわすため、ジュライは話題を変えた。
「なぁところでさぁ、デネブ校長の負けて帰ってきたやつの、よしよしの刑聞いたか? なんか負けて戻って校長からヤキいれられるかと思ったら、むしろ慈悲の笑みを浮かべ、お前はよく頑張ったねよしよしと、頭なでなで。むしろ屈辱だろ。負けたヤツ全員やられたみたいだぜ」
「ぷぷっ、なんなのそれぇ」
そんなことで盛り上がり、お互いに笑い、塔の周りの庭園に到着したときだった。
「ねぇ、君たち」
後ろから声をかけられた。
二人が振り向くと、男がニヤニヤ笑いながら立っていた。
男の見た目は20代前半くらいで、オレンジ色に近い赤い髪で襟足の長い髪形、左頬のツタのような柄のフェイスペイント、オレンジ色のフロック、見るからに怪しい雰囲気、そして右手には戦斧。
ジュライとモルガナは、身構えた。
「ぼくさぁ、この塔に用事があるんだけど、扉が閉まっていてね。君たち人質になって、市長とか校長とかに、開けさせもらえないかなぁっ!」
最初のコメントを投稿しよう!