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男がいきなり斧を降り下ろしてきた。
二人は咄嗟に身を翻し、武器を取り出した。
「モルガナ、コイツっ」
「ええ、この態度、善良な市民じゃないわね」
ジュライ達が武器を構えたことに、男は少し驚いたようだ。
「ふーん、君たちなかなかやるね。なんか思ったより、やっかいなことになっちゃったなー」
男が地面に手をかざし、呪文のようなものを唱え始めた。
「我が忠実なしもべよ、魔犬グリムよ、我、アスモデウスの名の下に出でよ!」
すると6つの歪んだ五芒星のような、紫色に発光する魔方陣が地面に浮かび、そこから同じく紫色に発光する6体の犬、ドーベルマンのようなものが現れた。
「何、これ…?」
その光景はモルガナを狼狽えさせ、ジュライに白い女性を再び思い出させた。
「昨日と、同じ!?」
「えっ?」
「気をつけろ、モルガナ! コイツ、ヤバイぞ!」
男がジュライ達に指をさし、ドーベルマンをけしかける。
「やれ!」
6体のドーベルマンが吠えながら、一斉に二人に飛びかかった。
「くっ!」
ジュライよりも先に、モルガナが杖を振り、淡い緑色の閃光を撒き散らし、衝撃波を発生させドーベルマンを吹っ飛ばす。
「ジュライ君! 私がひきつけるから、学校に戻ってこの事を知らせて!」
「何言ってたんだよ。お前を置いて行けるわけないだろ!? オレも戦うぜ!」
ジュライもドーベルマンを斬りつけ応戦するも、昨日のポニーのようなものとは異なり、ドーベルマンの動きは素早く、生命力も高いのかダメージをあたえても、紫の光の粒子を撒き散らすだけで、なかなか倒れない。
「くそ…!」
ジュライもモルガナも、瞬く間に体力を消耗していった。
「よーし、下がっていいぞ」
戦闘をドーベルマン人間任せ、高みの見物だった男が、ドーベルマン達を自分の後ろに下がらせると、息も絶え絶えな二人につかつかと近づく。
「さて、改めて君たちぃ、人質になってもらうよ!」
男がにやりと笑った、そのときだった。
「待て、アスモデウス!」
凛とした少女の声が響いた。
ジュライ達が、声が聞こえた方に顔を向けると、サリアが走りながら、男に矢を放っていた。
「うわっ、チョーやっかいなのが来た!」
男が矢を宙返りでかわし、斧を構え直す。
「サリア!」
「サリアちゃん! どうしてここに!?」
ジュライとモルガナが驚くなか、サリアが男に矢をむけたまま冷静に言った。
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