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あそこまで大きく避ければ、必ず隙が生まれる。それを狙ったのだ。
「くっ!」
アスモデウスは、斬られた左腕を庇いながら、後ろに下がった。そして、紫色の光の粒子となって消滅した。
「倒した…のか?」
ジュライは疲労のためふらつきながら剣を鞘に戻し、木に寄りかかり体を休めながら、サリアにたずねた。
「いや、自分のほうが不利だとさとり、撤退しただけだろう。おそらく数日たてばまた現れる、戦略も変え、装備も今より整えてな」
「詳しくは、デネブ校長が話してくれる」
アスモデウスとの交戦の後、サリアにそう言われ、ジュライ、サリア、モルガナの三人は学校へ戻り、校長室へむかっていた。
コンコンとサリアが校長室の、アンティーク調のドアをノックすると、「入りたまえ」とスワン・デネブの声が聞こえ、三人は「失礼します」と校長室へ入った。
校長室兼、スワンの寝室は広く、高級そうな家具が一通り揃えられ、棚には様々なメダルやトロフィーが飾られている。窓際の机の長椅子に、思い詰めた表情のスワンが座っていた。
「サリア、その様子だと、どうやらこの事態をモルガナとジュライにも知らせなければならなくなったようだな」
「はい、先ほどルキの部下の一人、アスモデウスが塔に侵入しようとし、それを止める為、交戦しました」
スワンは悔しげな、そしてどこか悲しげな表情になった。
「くっ、昨日の天使の侵入により、悪魔どもが警戒し、悪魔の攻撃はまだ先だよそくしていたのだが、慢心していた」
校長の様子に、ジュライとモルガナは驚いた。
「(デネブ校長は知っていた? サリアの正体も、塔に侵入しようとしたヤツの正体も!?)」
しかしジュライはそのことに納得する箇所があった。今日、保健室から寮に戻り、支度をした後我に返り、校長室に駆け込み、昨日の出来事を報告したのだが、そのときのスワンは、どうせ居眠りをして夢でも見たのだろうと、投げやりな態度で、取り合ってもらえなかったのだ。
今から振り替えれば、スワンはジュライに知られてはいけない案件を隠していたため、あのような態度をとっていたのだ。
スワンは椅子から立ち上がり、ジュライとモルガナに頭を下げた。
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