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街の中心にある夜明けの塔は、古びたレンガと窓が全てくすんだ深緑のステンドグラスの重厚な造りで、階数は15階の小さな塔だ。
塔というより、砦である。
塔の下の荒れた庭園で、夕方から彼は剣の練習をしていた。
青い髪に紫の瞳、青を基調とした服装の少年の名はジュライ・アルタイル。
フレア戦士育成学校の生徒だ。
素振りの音が空を切る。
「48、49、50…、よしっ、少し休んでもう一度50回…」
ガサッと音がして「誰だ!」と振り向くと、クラスメイトであり、同じ任務につく少女、モルガナ・スピカが立っていた。
「ごめん、ジュライ君。驚かせちゃった」
彼女は魔女のはしくれで、自然に溶け込みそうな緑色の魔法使いの衣装に身を包み、ステッキを両手に持ち、くすりと笑う。
「なんだよ、驚かせるなよー。まっ、ここにモンスターが来たこと自体ないけどな」
そう言いつつも、ジュライはホッとしていた。
音がしたとき、一瞬何かの気配を感じたからだ。
「(気のせいだよな)」
「時間になったし、オリオン部隊も来たみたいだから、寮に帰りましょっ」
「あ、ああ」
モルガナに手をひかれ、ジュライはこの場から去った。
実は二人を木の上、枝の狭間から見る赤い瞳があった。
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