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夕暮れの放課後、ジュライは腰に剣を下げ、今日も学校の隣に聳える夜明けの塔へ向かった。
ジュライは剣術を校長のデネブから評価され、あることを任されていた。
それが夜明けの塔の守護、あの任務である。
もっとも守護、もとい塔の護衛、いや警備といえどモンスターと戦ったことはない。
フレア自体にモンスターが侵攻することは稀で、仮に近づいたとしても、門を守る戦士に討伐される。
生徒のモンスター相手の実戦授業も、街の外の魔の森で行われる。
よって大抵は塔の周りをブラブラ巡回したり、昨日みたいに剣の練習をしたりして、17時から終了時間の20時まで暇を潰している。
実際そうしているだけでよいと、始めて任務についたとき、校長が言っていた。守護者の雰囲気を味わえれば、それでいいらしい。
その後の警備は正式に認められた戦士の部隊、オリオン部隊に引き継ぐ。
オリオン部隊は剣などの武器の練習が認められておらず、配置について立っているだけと聞いたことがあり、ジュライはこの暇な時間を強いられる戦士たちに純粋に敬意を抱いていた。
ちなみにジュライの他にこの任務を与えられた生徒は、クラスメイトのモルガナと隣のクラスの男子生徒ひとり、三年の先輩4人の6人だ。
普段はモルガナと一緒にこの任務をこなすのだが、あいにく今日はひとりだ。
剣の練習に励み、モルガナと任務をこなすのが、ジュライにとっての楽しみであり、この任務を嫌いになれない理由である。今日の楽しみは、半減だと思った。
「(そういえば、塔の中はどうなっているんだろう?)」
庭園を歩きながら、ジュライはふと思った。
塔の中に入ったことは、一回もない。塔の入り口の鉄扉は開けようにも硬く閉ざされおり、窓を割って入るなんて常識的に考えてもってのほかだ。
そのとき。
カシャッ…
「な、なんだ!?」
急に音がした。塔の入り口の方からだった。
「なんだよ、これ…?」
慌て入り口に向かうと、扉が開いていた。こじ開けられた様子はなく、扉の向こうは何も見えない深い闇だった。
「モンスターか?」
先生に知らせるべきだろうか?
いや、低級のモンスターなら倒せる自身はあったし、知らせるなら侵入者の正体をある程度知ったほうがいいだろうと思い、ジュライは塔に入った。
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