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すぐに目が慣れ、塔の様子がわかった。
入り口から入ってすぐホールがあり、塔の中は埃っぽく長年手入れしていないようだ。内装も外観を裏切らない雰囲気だが、外から見るより面積が広く感じる。
ホールの奥にひとつ廊下があり、迷わず進んだ。廊下は長く感じる。均等に並んだ窓のステンドグラスからは、光がほとんど射し込まず薄暗い。
「!」
廊下を抜け、少し広い部屋に出た。奥に、2階に続く古びた階段が見える。
そしてそれはいた。
ジュライは剣をかまえた。
それは白いマントのような、長いローブを頭から被っていた。
顔は隠れてわからないが、ローブの下は薄い白いドレスを着ており、胸の膨らみとスリットから、これまた白いハイヒールをを履いた華奢な足が見えるので、性別は恐らく女性。
「(動きやすい格好ではないし、様子からして丸腰だな。ならば!)」
ジュライは、前に出た。
「この塔にドロボウかよ! 確かに古いお宝は、ありそうだけどな」
ジュライは女性を取り押さえ、オリオン部隊に引き渡そうと考えていた。だが、その浅はかな考えはすぐに吹き飛んだ。
予想に反し女性は一瞬でジュライの目の前まで間合いを詰め、ローブの下から白いクロスボウを取り出した。
「失せろ…」
女性が始めて口を開いた。声色は氷のように冷たい。
「なっ!?」
ジュライは戸惑った。モンスターは斬ったことはあっても、人間を斬ったことはないし、したいとも思わない。
この状況でも同じで、武器を突き付けられても剣は振るえず、どうしていいかわからない。
そのときだった。
ジュライの後ろから矢が飛んできて、ザッと女性のローブに刺さった。
「えっ!?」
振り向くと、サリアが立っていた。
彼女は弓を手にしており、すぐさっきの矢が彼女が射たものだとわかった。
「おまえは、転校生の!?」
「ちっ!」
白い女性は舌打ちすると、床に手をかざした。
すると彼女を囲むように、床に青白く発光する円形の魔方陣のようなものが、4つ浮かび上がり、その中から小さなペガサスのような、白く光り翼の生えたポニーが現れた。見るからに普通のポニーではない。
女性はそのまま窓ガラスを割って、逃走した。
「待て!」
ジュライは慌て追いかけようとしたが、サリアに止められた。
「そこの青いの、深追いしないほうがい
い。そのまえにコイツらを倒そう」
光るポニーが、ふたりを睨んでいた。
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