第一話 熾天使降臨

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すぐに目が慣れ、塔の様子がわかった。 入り口から入ってすぐホールがあり、塔の中は埃っぽく長年手入れしていないようだ。内装も外観を裏切らない雰囲気だが、外から見るより面積が広く感じる。 ホールの奥にひとつ廊下があり、迷わず進んだ。廊下は長く感じる。均等に並んだ窓のステンドグラスからは、光がほとんど射し込まず薄暗い。 「!」 廊下を抜け、少し広い部屋に出た。奥に、2階に続く古びた階段が見える。 そしてそれはいた。 ジュライは剣をかまえた。 それは白いマントのような、長いローブを頭から被っていた。 顔は隠れてわからないが、ローブの下は薄い白いドレスを着ており、胸の膨らみとスリットから、これまた白いハイヒールをを履いた華奢な足が見えるので、性別は恐らく女性。 「(動きやすい格好ではないし、様子からして丸腰だな。ならば!)」 ジュライは、前に出た。 「この塔にドロボウかよ! 確かに古いお宝は、ありそうだけどな」 ジュライは女性を取り押さえ、オリオン部隊に引き渡そうと考えていた。だが、その浅はかな考えはすぐに吹き飛んだ。 予想に反し女性は一瞬でジュライの目の前まで間合いを詰め、ローブの下から白いクロスボウを取り出した。 「失せろ…」 女性が始めて口を開いた。声色は氷のように冷たい。 「なっ!?」 ジュライは戸惑った。モンスターは斬ったことはあっても、人間を斬ったことはないし、したいとも思わない。 この状況でも同じで、武器を突き付けられても剣は振るえず、どうしていいかわからない。 そのときだった。 ジュライの後ろから矢が飛んできて、ザッと女性のローブに刺さった。 「えっ!?」 振り向くと、サリアが立っていた。 彼女は弓を手にしており、すぐさっきの矢が彼女が射たものだとわかった。 「おまえは、転校生の!?」 「ちっ!」 白い女性は舌打ちすると、床に手をかざした。 すると彼女を囲むように、床に青白く発光する円形の魔方陣のようなものが、4つ浮かび上がり、その中から小さなペガサスのような、白く光り翼の生えたポニーが現れた。見るからに普通のポニーではない。 女性はそのまま窓ガラスを割って、逃走した。 「待て!」 ジュライは慌て追いかけようとしたが、サリアに止められた。 「そこの青いの、深追いしないほうがい い。そのまえにコイツらを倒そう」 光るポニーが、ふたりを睨んでいた。
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