第1章

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ここ数日……。 いや、ここ一ヶ月近くまともにニュースもスマホも触っていない。 なんもかんも面倒で、電話の着信音も切っていた。 眠って、食べて、TVが喋っていても見てなどいない。 食事はあるもので過ごせた。 案外生きていけるなと思った。 でも、さすがに食料もなくなって、ガス代とか支払いが迫っていた。 室内から見る外界は、まぶしすぎて目に染みる。 確かに毎日カーテンだけは開けていたんだ。 でもいざ出るとなると……まぶしくて、なんだか気後れした。 TVで気温を確認して、デニムにカットソー長めのベージュのコートを羽織った。首が寂しくて厚めのストールを無造作に巻いた。 ――しまった!化粧してない―― 慌ててメガネとマスクですっぴんを隠して一歩踏み出した。 景色はそんなに変わっていないのに、お邪魔しますと言いたくなる。 頬に当たる空気が前より冷えている。 ……もう冬なんだよね?…… マスクの中で呟いた。 もっさりと巻いたマフラーに顔を埋めるようにして、体を小さくしながら歩いて十分のコンビニまで歩いた。 靴を履いたのもなんだか久しぶり。 ごみ捨てならサンダルで事足りた。靴で歩く感覚が不思議だった。 たすきがけにしたカバンには財布と払い込み用紙しか入っていない。 もうスマホを持つことも忘れるほど、ほんとに何もかも疎くなっていた。
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