第1章

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買ったものの入ったビニールをぶら下げ、また【ピンポーン】に送り出され、コンビニを出た。 「ありがとうございました~」 後ろで店員の声が聞こえ、ちょっとだけ緩んだ気持ちになった。 店先の灰皿の周りに三人の学生くらいの男の子達がスマホとにらめっこしながら目をぎらつかせている。 目を合わせてはいけないと思いながらも、耳だけは神経を集中させていた。 「お前はいいよな~。このまま行けばご安泰なんだろ?」 「なんだよ!お前は嫁さんがセレブだって、悠々自適って最高じゃん」 「俺は今頑張んないと、ダメになるって。それも五年前から着たんだぜ?お前らは十年以上先じゃんか……人生怖いよな」 ――――何の話なのだろう? 五年前から着た? 謎の会話を耳にしながら、マフラーに顔を埋めてその場を立ち去った。 十年以上先……。 ほんの一年前まで私は、十年先もバリバリに働いているはずだった。 あんな事さえなかったら……。 十年勤めた会社を辞めたのだ。 会社自体が大きく報道されるほどのミスを犯した。 建物の不良が続々と見つかり、新聞やTVで叩かれた。 負債を抱え、会社そのものが身売りをし、私はリストラされた。 これでも、期待された人材だった。 私の下には部下もいて、女性では異例の昇進を果たしてきた。 自慢でもあった。 付き合う恋人だっていた。 でも、結婚できる暇もなく休みも仕事に行くほうが楽しかった。 部下のミスなんて、いくらだって謝った。 それを苦に思ったこともない。 こんな頭でよかったら、いくらだって下げることができた。
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