第1章

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先ほどの彼らが何を言っているのかと、帰宅すると久しぶりにTVの電源を入れてみた。 でも、ワイドショーでもそれはわからなかった。 ただアイドルが電撃結婚。運命は未来からのメールで♪ それが何を示しているのか全くわからなかった。 リモコンを握って、別の局に変えると 政治が、未来の声で税金対策。 別の局では、犯罪者撲滅に未来から犯罪者名簿流失を利用。 【未来】 なんだ?未来からのメール?未来から? 誰かの名前?宗教?! パソコンを立ち上げようとして、ベッドの下にスマホが転がっているのが見えた。 手を伸ばして、拾い上げるとバッテリー切れ。 何だかおかしくて、鼻でふふんと笑ってしまった。 充電器を持ち歩くほど、スマホなしには身動きも取れなかったのに今ではホコリが被ってもお構いなしだ。 正直外界と関わるのが疲れていた。 「大丈夫?」 「仕事見つかった?」 「良かったらランチでも?」 心配は嬉しかった。けれど、家庭を持つ彼女達とは感覚が違うのだ。 話しをしても、苦しくなるばかりだった。 ふた言目には「結婚」「赤ちゃん」……。 今更と思った。 私は、働きたいのだ。わき目も振らずに、ただ評価と結果の出るあの仕事に戻りたいのだ。 それを口に出せば、彼女達の笑顔が固まる。口に出せなくなって息苦しくなった。 彼女達にとって「家族あっての仕事」に過ぎないから。 温度差を感じて、会う事をやめた。 職場の人間にも、仕事が決まった人間からの報告が嫌で着信を拒否した。 私から連絡を絶ったのだ。
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