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亨は昼頃会社を出て、まだ戻っていない様子だった。
どれだけ遅くなるかわからないから何か食べてろと言われたけれど……会社の玄関ロビーのガラス張りから見える外はクリスマス一色の、イルミネーション輝く大通り。
少し浮かれていただけに、無性に寂しさを感じてしまう。
一人で外で食べる気にはなれず、結局そのまま電車に乗って亨のマンションのある駅の構内にある喫茶店で、簡単に食べた。
何か、作った方がいいのかな、とか。
ちょっと考えたけれど……重いとか、家庭的なとこ主張してるとか思われたら嫌だし。
そもそも、仕事で遅くなるとはいえクリスマスイベント先でのことだ、交代で食事休憩したりするだろうから、何か食べては来るだろう。
勝手にキッチンを使うのも気が引けるので、結局止めることにする。
亨から借りた鍵を使って、中に入る時に少しだけ、寂しさが和らいだ。
静かな部屋で、テレビをつけてコーヒーを入れてしばらくじっとしていたけれど、やはり何か落ち着かなくて。
壁の時計を見上げれば八時を回っていた。
「何時ごろ、帰るんだろ」
なるべく早く帰るとは言ってたけれど、予測がつかない。
私は仕方なく、脇に寄せておいたいつも通勤に使うものよりも少し大きいバッグの口を開けた。
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