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耳元で、音がした。
だけど、瞼はあがらない。
首筋や耳の淵を、少しひやりとした指先がゆったりと辿って行く。
その感覚が、耳孔をくすぐった時にぞくりと腰が疼いて身を捩る。
「ん……」
ここ、どこだっけ?
寝ぼけていて、一瞬状況がよくわからなかった。
首筋と耳を行ったり来たりする指先の感覚が、ぬるりとした温かいものに変わって私はようやく、目を開けた。
「……とーる? おかえり」
「んー、ただいま。お前、また熱ぶり返すよ」
私の首筋に唇をあてたまま話すのがくすぐったくて、私は思わず肩をすくめた。
そうだ、ここは亨のマンションのリビングで、お風呂を借りた後テレビを見ながら、ソファに座って眠っていたらしい。
私は今、ソファの背もたれに身体を預けたまま、亨の両腕に囲まれて身動きがとれなくなっていた。
「亨こそ、手、冷たい」
「あ、そっか。じゃあ手、使わない」
「え?」
首をかしげていると、亨が一度離れた。隣に座り、腰に手を回して引き寄せる。
片足を、ひょいっと持ち上げて、膝の上にまたがるように座らされた。
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