melody1

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その途中で、 ………あ。 目の前を歩く学ラン姿の男の子の制服から、何かがぽすん、と私の前に落ちてきた。 なんだろう、と思って拾いあげると、それは落ち着いたえんじ色の定期入れ。 「………これ……」 柄はないけれど、端の方にあしらえられているマークが控えめに格好良さを醸し出している。 ……きっとこの持ち主さん、すごくオシャレな人だ。 高校生でこんな定期入れを選ぶなんて、センスがいい。 私はどちらかというと派手な柄のついたものよりも、シンプルなものが好きだ。 それでいて密かに細かいところに気を配られたデザインが好き。 結局、 彼のセンスがいいというより、私の好みと合っているだけかもしれない。 「………って」 こんなことを考えている場合じゃない、これを早くあの学ランの人に届けなければ。 前を向き直るといつの間にかかなり差が開いていて、かなり前に彼の背中が見えた。 見失ってしまったら私も彼も大変だ。 慌てて、前の歩く背中を小走りで追いかける。 「……あの」 追いついて、後ろから学ランの背中に声をかけるけれど、その背中は止まることなく進んでいく。 ……き、気付かれてない。 「……あのっ!」 今度はもっと大きな声を出して、学ランの袖をくいっと引っ張ると。 彼はようやく気付いたみたいで、その歩みを止めた。
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