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「のんちゃーん?何ぼけっとしてるの」
「あははは、のんちゃんって割としょっちゅうぼけっとしてるよね」
考え事をしているうちに、いつの間にか自分の世界に入り込んでしまっていたらしい。
私はよくぼーっとしている。
それは否定できない事実。
「あれ、ごめんごめん。また、つい」
あは、と笑ってみるけれど、そんなことを考えている私は確実に
“ふわふわ系女子”
ではないはず。
「んでさ、のんちゃん。私昨日すごいこと発見しちゃった~」
「え?何?どうかした?」
私の方に向かってにやりと笑って身を乗り出した桜ちゃんに、思わず身構えてしまう。
私と桜ちゃんはまだ今年初めて同じクラスになったばかり。
今こうしてよく話しているのも、桜ちゃんと小夏が仲良しで、小夏と私が中学時代からの友達だから。
だから、私の方はまだ完全に自然体で話せるわけではない。
……自然体で話しているように見せることは得意だけれど。
「いやー、びっくりしちゃったよ、のんちゃん」
「え、え、何?なんか怖いなぁ」
「昨日さぁ、3人で光里について話してたじゃん?」
「あ。う、うん」
光里、その名前を聞いて思わず顔が引きつったのを感じた。
光里というのは、
藤野光里(フジノヒカリ)。
私と2年連続のクラスメイトのこと。
彼女の話、それは彼女はピアノを物凄く上手に弾く人だ、という話だった。
去年の合唱コンクールで私のクラスでは彼女が伴奏を務め、その上手さで一時期校内を騒がせた。
昨日していたその話を、今桜ちゃんがぶり返そうとしている。
……彼女の話をするのはちょっと気が引けるから、なるべく避けたいんだけど……
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