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ちらっと教室の後ろに目をやると。
藤野光里は一番後ろの席で本を読んでいた。
……あ。男子に話しかけられた。
特徴の長いストレートのポニーテールを引っ張られている。
しばらく2人で楽しげに言い合いをした後、藤野光里は仕方ないなぁ、という風に男子に飴を手渡した。
頭をぽんぽんしてから、男子が嬉しそうに教室を出て行く。
……あの2人、付き合ってるのかな。
男子の方は私の知らない人だけど。
まあ、藤野光里は男子とも物怖じせずに話すような女の子だから、ただの男友達のひとりかもしれない。
そんな風景をぼんやりと見ていると、
私の両サイドに揺れる髪の毛の束が両方ともぐいっと前に引っ張られた。
「うっ、わぁ」
いきなりかかった力に対応しきれずに、私は前に倒れこむ。
咄嗟に足に力を入れて前に向き直ると、呆れたように笑う2つの顔。
……自分の世界って恐ろしい。
「あ、はは……またやっちゃった」
「もう、のんちゃんやばい!のんちゃんの天然要素やばい!」
「もー、そんなに凝視したら光里の話してるってバレちゃうでしょー」
「にしてもこの二つ縛り、いいね。のんちゃんを現実世界に引き戻すアイテム的な」
私のサイドでまとめられた髪の毛を桜ちゃんにぐいぐいと引っ張られて、苦笑する。
そんなに引っ張って将来私が禿げたらどうするの。
なんて的外れな回答をすると、2人は楽しそうに笑った。
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