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――まずい。
まずい、まずいまずいまずい!
目の前で何も知らずに笑う顔を見て、背中に冷や汗が伝う。
これまで私はずっと、その事実を隠して過ごしてきた。
知られないように、
目立たないように。
何も詮索されないように。
だけど、きっとバレた。桜ちゃんに。
桜ちゃんは、きっといつものハッキリとした声で言うんだろう。
そうしたら私のことは教室中に広まる。
噂は教室から教室へ、
2年生全体へ、
学校全体へ、
……広がるかもしれない?
それだけはあり得ない。
自意識過剰でもいい、そんな最悪の事態は避けないと……!
「でね、藤野光里って検索したらね」
「なになに、何か分かったの?」
そんな私の気も知らずに桜ちゃんと小夏の間で話が進んでいく。
……どうしよう。
そうは言っても、こういう時の話の逸らし方を私は知らない。
「そうそう!光里ってね、すんごいいっぱいコンクールに出てて、しかも」
――言われる。
反射的にぎゅっと目を瞑る。
「――世界大会とかで賞まで貰ってるんだよ!すごくない!?」
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