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再度藤野光里の方へちらっと目をやると、彼女はさっきと同じように読書に熱中していた。
……独特の雰囲気、か。
…………どこがだろう。
そう思ってじーっと見つめてみる、
……けど、やっぱり分からない。
至って普通だ。
なんかごめん、と心の中で彼女に謝る。
……そういえば。
彼女とは去年から同じクラスだったけれど、こうしてじっと見つめたことはなかったかもしれない。
目があってしまうのが怖くて、無意識に視線を向けないようにしていたのかも。
この2年間で彼女と話したのは、本当に数えるほどだけ。
それも義務的な用事でだけだ。
「でね、そしたらあいつ、いきなり追いかけてきてごめんって言ったの」
「きゃー!やだ、小夏愛されてるー!」
「ほんと、調子いいんだから」
「でもかっこいいじゃーんっ」
「……まぁね」
きゃーーー!という桜ちゃんのかん高い叫び声が耳に響いて、思わず顔をしかめてしまう。
再び2人の会話に耳を傾けると、話題はいつの間にか小夏の彼氏の話へと変わっていた。
「ね、のんちゃんもそう思うよね!」
桜ちゃんがこちらに笑顔を見せてきたから、私もすぐさま笑顔になって頷き返す。
「ほんと、小夏羨ましい~」
「いいよねぇ~、こいつめっ」
「やだ、桜ちゃんも彼氏いるくせに!」
きゃはは、と今度は私も2人の輪に入って笑いあう。
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