一杯の水・ライジング

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 俺たち、異能力者の能力は、新技術としてとても価値がある。  それを工業化するためには、とんでもない複雑な手続きと、とんでもない使用料を払わなくてはならない。  そのための法律もある。  ミーンミンミンミン  しかし、この暑いなぁ。  こいつと証拠物件のヴィヴィアンを警察署まで連れて行くのは、嫌だなぁ。 「よーし! 」  突然、武志が決意の雄たけびを上げた。 「とりあえず遊ぼう! 」  これぞ救いの声!  彼こそ英雄!  パイクリートというものをご存じだろうか。  氷におがくずを混ぜることで作られる複合材料で、通常の氷より解けにくく、丈夫だ。  第二次世界大戦中のイギリスで、氷山で巨大な空母を作ろうという計画があった。  その立案者である発明家、ジェフリー・パイクが発明した。 「混ぜるのは古新聞でもいいんだけどな」  一番近くにあるモルガンの家から持ってきた。  湖面へはヴィヴィアンの蔦で降り、そのまま足場にする。  湖面に新聞紙を広げては俺が凍らせる。  まず、畳ほどの大きさの灰色の氷ができた。  それをヴィヴィアンの蔦で支え、新しく作ったパイクリートの板を凍らせてつなげる。  船の形になってきた。 「涼しくなってきた! 」  武志が喜ぶが、サイボーグが夏ばてするのって、どうだろう。  生身では、この氷に座るのは冷たすぎるな。 「薔薇の花びらの上にのれば、いいでしょう」  モルガンが蔦の上で乗っていた、あれか。  一輪のせてみると、何ともファンタジーな出来になった。  でも乗り込んでみるとつめたくないし、いい感じだ。  氷の船は、すでに軽自動車くらいの大きさになっていた。 「よし! これで川下りしよう! 」  船の回りに俺がちょいちょいッと加工すれば。  岩場でも安心、分厚い水で包まれた。 「水のクッションだ。勢いよく滑るぞ! 」
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