一杯の水・ライジング

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 さっきモルガンからもらった普通サイズのバラは、胸ポケットに入ったままだ。  そのバラを船首につける。  船首旗の代わりだ。 「氷山の一角ってよく言うけど、すごく浮いてるね」  武志が嬉しそうに驚いた。 「それだけ、うまくできたという事でしょう」  モルガンも、嬉しそうだ。 「出港! 」  堰の口から飛び出した。  降りる間、武志のジェットが頼みだ。  そして、川下りがはじまる。  ああ、薔薇の香りと冷気、そして風を切る爽快感!  さっそく急カーブだ。  俺は船に取り付けた水をジョイスティック風に固めて握ってる。  舵のつもりだったが、無理だ。  川が浅すぎる! 「ブレーキは僕か! 」  武志があわてて前に出てジェットをふかした。  がんばれよー。  武志がふかすたびに、熱気が迫る。  あいつのジェットエンジンは強いエネルギーを持った光、レーザーを鏡で反射させ続けることで空気を爆発させる。  燃料を使うジェットエンジンと違い、煤が出ないのはいいな。  川を下るたびに、山に張り付くように立った家が、ぽつぽつから徐々に増えてくる。  川が長い間に蛇行を繰り返し、地面を均してきた平地が広がるからだ。  田んぼも川沿いにどうにかして造られた物から、大きなものに変わる。  風になびく緑の田んぼは、見るからに生きる希望! って感じで好きだ。  スピードは自転車とそう変わりないはずで、それなりに時間がかかったはずだ。  でも、楽しい時間はほんとにあっという間だね。 「ここまで来ると、川幅も広く、穏やかです。  そこの河川敷から陸に上がりませんか? 」  以外にも、モルガンが妙案を思いついた。  もっと堅苦しい奴だと思ってたんだが。  俺は意識を、パイクリートの船体に集中した。 「周りの水を分厚くして、粘度を上げれば、陸に上がっても大丈夫そうだ」 「よーし! 行くぞ! 」  武志が船の後ろに回り、ジェットをふかした。  目の前には川を隔てる堤防。  そこに生えた雑草をなぎ倒してのぼり、堤防上の散歩道へ滑り込んだ!
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