一杯の水・ライジング

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ザッパーン!  あまりに勢いが強すぎて、水がはじけた!  やばい! 急いで下に水を集中させないと!  だがその努力も虚しく、僕らは大波の下敷きになった。 「アハハハ! 楽しいですね!」  聴いたことのない笑い声。その主はモルガンだった。  いつもクールなあいつが、こんな子供っぽい遊びのようなことで興奮を抑えきれずにいる。  なんだ、かわいい顔もできるじゃないか。  川下り&道下りもそろそろ終わり。  もうすぐ海だ。  そしたら旅の始まりである商店街ももうすぐ。 「あ、パトカー」  武志が気づいた。 ウウー!ウゥ ウウー!ウゥ  後ろから、けたたましいサイレンを鳴らしてやって来た。  まさか、捕まる!?  一瞬、みんなが身構えるのがわかった。  と思ったら、そのまま通り過ぎた。 「な、何だぁ? 」  拍子抜けして、思わず間抜けな声が出た。  パトカーは商店街へ向かっているようだ。  そして、ある角を曲がる。  あれ? あそこには、さっきの喫茶店があるんじゃないか?  その時、頭上でジェットの騒音が響いた。  旅客機とか、そんなのじゃない。  もっと低空から、武志のと同じ音が頭上を横切った。  その形は手足が細くて、ウエストも引っ込んだ小柄な女の子の背中に、翼を生やした姿にしか見えない。  同時に武志のスマホがなった。 「達美ちゃんからメールだ」  やはりそうか。 「商店街で、暴動が起きてるって! 」  あの空飛ぶ女の子は、商店街の上で旋回している。
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