一杯の水・ライジング

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「お前が悪いんだー! 」 「違う! お前が悪いんだー!! 」  な、何だ、これは。  つい、さっきまでいた喫茶店が、恐怖で噴火したような怒声に包まれていた。  窓ガラスが何枚も割られている。  並んでいたバイクは倒れ、ハンドルは曲がったりミラーが割れていた。  暴れているのは、店にいた客たち。  それをパトカーと警官たち、そして心配そうに見つめる人々が取り囲んでいた。 「てっ店長!! 朝子さん!! 」  そう叫んで武志が駆けだした。  その先では、警官と暴れる客が格闘している。  不意に、バイクのエンジン音が轟いた。  逃げ出そうとする客たちだ。  周りの人は見えていないのか?  稲妻のような音とともに、人影がゆっくり下りてきた。  さっきから空を旋回していたやつだ。  赤い短髪に猫耳を生やし、更に背中にジェットパックを造り付けた少女。  宣伝文句に「いつでもサラサラ」とありそうな紫外線よけの白いロング丈パーカーをワルそうに腰に巻きつけ、今はカーキ色のタンクトップ。  それに足にピッタリフィットした、膝真ん中までの鮮やかに青いデニムパンツ。  真脇 達美だ。  彼女は武志の同型サイボーグ。  しかもなんの因果か、アイドルで武志のイチャラブな相手。  そんな彼女がまずしたことは、白いサンダルを脱ぎ捨てることだった。  そして素足になると、加速途中のバイクを抱きかかえ、回るタイヤも気にせず軽々と持ち上げた! 「暴れるんじゃないの! 」  ハイテクバトルヒロイン、レイドリフト・ドラゴンメイド。   レイドリフトとは、光速(Ray)で横滑り(Dlrift)の略らしい。名に恥じない動きだ。  ちなみに、一番最初の1号はワイヤーガンを使い、当時は小学生だったそうだ。 「俺は暴れてない! 暴れてるのはあいつらだ! 」  持ち上げられたライダーは、必死にマシンにしがみつきながら、後ろを指差した。
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