一杯の水・ライジング

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 この説明は、突然上がった客の叫びによって断ち切られた。 「あっ! すげー! 異能力者だ! 」  その叫びを聞くと、他の人たちも立ち上がった。 「えっ? どこ!? 」 「あ! あそこ!! 」  たちまち、お客が立ち上がり、俺のまわりに人だかりができた。  お、おれはとりあえず、水を紐状にして、ぐるぐるまわしてみる。 「おお~」  ウケてるウケてる。  感嘆の声が重なり、カメラが次々に向けられた。 「ちょっと! 写真を撮るなら許可を取ってからにしなさいよ! 」  人だかりの向こうから声がした。  それに対する答えは。 「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」「写真、撮っていいですか? 」  とてつもない、うるささだ。 「いいですよ」  スマホよりも本格的なカメラが多いな……。 「エクスティンクションだ! あんたエクスティンクションだろ!? 」  客の男に気付かれた。 「ええ、そうですけど」  どうやら、異能力者オタクがいたらしい。 「エクスティンクションさんて、何をしてるんですか? 」  他の客から、よくある質問。 「火事の時の消火。主に人命救助のお手伝いです」  エクスティンクションは英語での消火でしょ。とは言わなかった。  思ったより、突っかからず話せたな。  俺は本来、じろじろ見られるのが苦手なんだ。  あの何もかも見透かしてやろうという視線で見つめられると、親でもないのになんでそんなことするんだ! という怒りがわいてくる……。  が、思ったより視線が少ないな。 「……何してるんですか? 」  人だかりの何人かは、俺ではなくスマホを見ている。
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