一杯の水・ライジング

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「え? 」  目の前でスマホをいじっていた女性は、「あっ」そう言って自分が質問されたことに気付いた。 「あの、WIKIであなたのことを検索していました」  本人が目の前にいるのに、することか?  迷惑をかけたくないなら、道を開けるぐらいするべきじゃないのか!?  もう、こんな所にいたくない!  俺は、文房具たちをカバンに放り込む。  超濃度細胞水は、まとまってるなら濡れる心配はない。  ポケットに突っ込んだ。  立ち去る前に、陽動作戦だ。 「あのね、ここにはもう一人ヒーローがいます」  視線が完全にこっちを向いた。 「レイドリフト・ワイバーンです!! 」  俺はそう言って、武志の手を取り、高々と上げて見せた!  お客の視線がスマホに集中した。  これでお客が詮索をはじめれば、時間が稼げる。 「レイドリフト・ワイバーンだってぇ!? 」  さっき俺を見抜いた男だ! 「最強のサイボーグ戦士! いくつもの異世界に召喚され、そのたびに救いをもたらした、真の英雄! 」  1秒しか足止めできなかった!  だが、計画に変更はない。  二人で逃げよう! 「ちょっと待って! 僕のコーヒーとケーキは!? 」  武志が抗議する。  後でおごってやります! 店長! こいつの無念の分まで代わりに味わってください! 「待って! お話しさせて! 」  にやにや笑いをうかべて、あの鋭い男が駆けてくる。 カランカラン  入口のドアを開けるとなる、鈴の音。  外は、やっぱり暑い。 「待って! 話を聞いて! 」  今度は女の声だ。
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