大学

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責任能力 そんな言葉が一番に浮かびました。 自分一人を生活させることだってやっとの私に、子どもを産んで育てる能力は経済的にありません。 学生のご身分で 学費を親に支払ってもらってるご身分で こどもだなんて。しかも、今まさに別れようとしている相手の。 堕胎。 検査薬の結果からその単語まで、約数秒。 産まないと決めた妊娠は辛いものでした。 悪阻は想像をはるかに超えました。 寝ても覚めても、立っても寝ても坐っても、終始吐いていました。 胃液が黄緑色をしていることを、M字のハンバーショップから香るあのスパイシーな香りが一歩間違うと段ボールの匂いにも似ていることを 私は初めて知りました。 堕胎にもお金が要ります。 私はフラフラな体で働きました。 アルバイトの仲間に相談すると、出来る限りのサポートをしてくれました。 店長は床に蹲って仕事をしてもいいと言ってくれました。 私が身体を前に折ると、トイレへ押し出してくれました。 休みの日には交代で家へ見舞いに来て、何も食べられない私のために飴やゼリー、果物などを差し入れてくれました。 言わないと仕事が出来ない。 そう思ってバイト先で打ち明けたのですが、予想以上に助けられてしまいました。 こんなに、友人の大きさを感じたのは初めてでした。
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