白紙のメール

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『そんな事、あるわけないだろう』  不機嫌そうな声で電話に出た従兄は、そう言い放って俺の問いを一蹴した。不機嫌な理由は多分、今朝、俺がメールを受け取った時の気持ちと同じだからだ。 『セキュリティに大穴があいているのでもなきゃ、他人がお前のアドレスを使ってメールを送る事なんて無理だ。アドレスが他人と被るわけがないって事くらい、いくらお前でも分かるよな』  そりゃあ、そうだ。もしメールアドレスが被ってしまったら、一通のメールが複数の相手に届いてしまう事になる。それは、メールという仕組みの破綻と同義だ。 『サーバーがいかれているっていうのなら、まだ、話は分かるがな。だが最近、そんな事故があったなんて報告、入ってないぜ。ちなみに、送信日時はいつになっているんだ』  言われて、メールの送信日時を確認する。――そして、俺は絶句した。
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