白紙のメール

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「……2030年の、11月29日」 『ふざけているのなら、切るぞ』 「ま、待って! ちゃんと聞いてくれって、本当だよ」  俺は慌てて食い下がる。従兄が怒るのも尤もだった。逆の立場だったら、俺だってそうしただろう。 「こんな朝早くに、わざわざ電話をかけて冗談なんて言わないって」  もう一度液晶画面を凝視する。間違いない。メールの送信日時は『15年後の今日』になっていた。 『すると、サーバーのバグか。お前、どこのスマホ使っているんだ』 「……エブリースターズ」  おずおずと、従兄が務めている会社の名前を挙げる。向こうで従兄がうめき声をあげた。 『……バグは、あり得ないな』 「社員のひいき目じゃなくて?」 『おかしいのは、サーバーじゃない。お前のアドレスだ、間違いない』 「休日出勤して確かめるのが嫌なわけじゃなくて?」 『そんな報告があがったら、俺のところに真っ先に通知が来るはずだ。そんな連絡は、受けていない』 「単に、俺が第一発見者なわけじゃなくて?」  また、苦しそうなうめき声が上がった。 『……分かった。今から出勤して調べてみよう。見て見ぬフリして、後からうちの不具合だったって分かったら俺の首が危ないからな』  もそもそと布団から這い出る音が聞こえた。 『だが、期待はするなよ。俺の冴えわたる鋭い勘によると、これはサーバーの不具合じゃあない』 「じゃあ、何」 『分からん』  不機嫌さがレベルアップした従兄はにべもなかった。
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