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『……そうだ、待てよ。お前、今から暇なのか』
「なんだよ、突然。ああ、別に予定は入ってないけれど」
『なら好都合だ。お前、今から〝あそこ〟に行ってこいよ。なんて言ったっけ、あの妙な会社』
「妙な会社?」
『そう。ほれ、タイムマシンがどうたらっていう研究所があったじゃないか。そのメール、未来から来た事になっているんだろう? 持っていって見せてみろよ。もしかしたら調査してくれるかもしれないぜ』
「タイムマシン……ああ、時空干渉探究会社」
時空干渉探究会社 (the space-time Continuum’s Encumbrance Research Home)。略称〝CERH〟.
うちの近くにある、胡散臭い研究施設。民間の会社で、なんでもタイムマシンを作っているという専らの噂だ。
『お前、機会があったら一度中に入ってみたいって言っていただろう。まさに絶好の機会だ』
「けど、相手にされるかな。今日は休日だし」
『お前はその休日に俺を呼び出したわけだが。なに、相手にされなかったら笑って帰ってくればいいだけの話さ。それとも怖いのか』
「そんな事ない」
いや、そんな事はあった。何をしているか分からない、不気味な研究所。そこに単身乗り込むのは、正直気が引けた。目が据わった研究者達に取り囲まれたりしたらどうする。
『じゃあ、行ってこいよ。どうせ、俺の方も目途がつくまで時間がかかるんだ。その間、お前がぬくぬくと家の中で待っているなんて許せない』
それが本音か。
「分かった。行ってみるよ。追い返されそうな気がするけれど」
『おお、そうしろ、そうしろ。じゃあ、俺は切るからな。何か分かったら、また電話する』
そう言い残して、従兄の電話は切れた。
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