先見の明

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「でも、なんでそんなけったいなこと他人にベラベラ喋ってるんや」 「これ以上、富を手に入れると、私は悪目立ちしてしまうんですよ。このメールの魔力は凄いです。なにせその気になれば、どんなことでも叶ってしまうんですから。自分から手放さないと欲望にまみれてしまうほどに。  だから、思い切って売りにだすことにしたんです。もちろん誰にでもというわけではないですが、あなたにはこれを持つ資格がある。言ったでしょ、合格だって」  俺はピースサインを男の前に突き出した。 「二百万でお譲りしますよ。なあに元はすぐ取れますし、欲に溺れそうになればこうやって他人に売れば良いんです。簡単なことですよ」  男は眉間に皺を寄せてしばし腕組みをして考え込んだ。ゆうに五十秒は時間をかけてたっぷりと沈思黙考すると、汗でてかった広いデコをつるりと撫でて快活にこう言った。
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