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「違いますよ。良いですか、想像してみてください。ギャンブルで大きな配当のものばかりをことごとく当てた男がいるとします。どう思います?」
「そら、えらい運のええやっちゃなあ思いまんな」
「それだけですか、本当に? なんの努力もしていない男が運だけで億万長者だ。運が良い奴がいたもんだなんて、そんな呑気なことを言って終わりですか」
男はひとしきり唸りながら
「ちょっとムカつくかもわからへんな。何でこいつやねんと」
小さくそう呟いた。ようやく本心が出てきた。経済的弱者は成功者への嫉みを少なからず抱いているものだ。ちょっとつついてやれば、存外、簡単に顔を覗かせる。まして酒が回って気が大きくなっている人間なら尚更である。
「それこそが悪目立ちなんです。宝くじの一等を当てた人間は、親戚にすら当選の事実を漏らさないと聞いたことがあります。コバンザメみたいな連中はそこら中にいますからね」
男はオンザロックをおかわりして、俺の話に耳を傾けていた。目元がぶれていないので、頭は正常に回っていると思いたい。
「話を元に戻しましょうか。そういったリスクを検討にいれて、未来予知の力をあなたならどう使いますか?」
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