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「あんさんも変なこと聞くなあ」
あんたも変な喋り方するなあ。言葉が半分出かけたが、ここはぐっとこらえた。男は、そう言いつつも割合、真剣にこの命題に取り組んでいるらしい。店内に掛かっていたジャズの演奏が一曲、終わった頃、男は答えを出した。
「悪目立ちできへんとなると、やれることは限られてくるな。せいぜい会社内での出世とか、株でちょい勝ちするとか、そんな具合に使うのがよろしな。生活水準を上げることには変わりないし、不自由のない暮らしができれば何も豪邸に住んだり、高級車を乗り回したりせんでもええ」
「賢明です。そして、合格です」
俺はにっこりと笑う。
男が本物の関西人であれば強烈なツッコミが待っていたであろうが、実際には虚を突かれ目を点にするのみである。
「なんのこっちゃねん」
ようやく出た感想はそれだった。まあ、こちらの方が話を進めやすい。
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