先見の明

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「実は、それは、ごく近くにある平行世界の干渉を受けての結果なのです。あちらの同時存在たるあなたが、同じような行動をとった為に、こちらのあなたもそれに引っ張られた格好なのです」 「ほう」  初めて素直に頭に入ってきたのか、男は硬い表情をいくらか崩した。「それでそれで?」 「ただ、残念なのはいくら間接的に干渉を受けたところで、こちらでの変化は微々たるものだということです。でも、もし。もしもですよ。直接的に、この変化を操ることが出来るとしたら、いかがですか?」  ここで一呼吸おく。 「先ほど、緩衝材の話をしました。今までの我々は、あくまで物質的な発想しかできなかった。それでは駄目なのです。しかし、一つだけその緩衝材になり得るものを私は発見しました」 「それや。それが聞きたかったんや」  男の鼻息が荒くなってきた。思った通り、脈ありのようだ。 「メールです。  良いですか? 情報化社会と呼ばれる現代において電脳世界の広がりというのは、まさに爆発的です。これはまだ多くの研究者たちが気付いていないことですが、その広い広い電脳世界にも物理的な限界があります。  しかし、理論上、電脳世界は広がり続けているわけですから無限大です。ここに相矛盾が生じている」
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