500年後の俺からメールが届いた。

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 例をあげればキリがない。ざっとこんなことが、俺の人生にはつきまとい、社会人になっても、まるでドジが直らない。むしろ社会人になれたことを奇跡と思えと、親兄弟までが言う始末。  つい先日も、商談の日時を間違えて、会社に大きな損益を出したばかりだ。おかげで休日の今日もまったく気分が晴れず、一日中布団を被って、くよくよしていたら、アパートの西の窓から日が差し込んできた。  ああ一日無駄にした。よくないなあ。よし、駅前の焼き鳥屋にでも行って、気分転換するかと、ようやく起き出す決心がついた、その時だった。  枕元のスマートフォンがメールを受信した。  見ると、送信者の名前が俺の名前になっている。よくある迷惑メールだろう、と思った。件名も『500年前の俺よ。ありがとう!』となっている。全く意味不明だ。フィッシングにしても、これで一体誰がどんな興味を抱くというのか。もちろん無視して、立ち上がり、着替えて家を出た。  三鷹台駅の焼き鳥屋「日本一」は、近所に有名な医学研究所の別室があって、よくそこの職員や研究者らが飲みに来る店だ。今日も、店の一角で、難しい専門用語を飛びかわせて、美味そうに飲んでいるグループがいた。    俺は俺で、皮とぼんじり、つくねとネギ間、という俺的に定番のラインナップで梅サワーを飲んでいた。すると、またメールが届いた。  送信元は、また俺になっている。だが、件名に『ちゃんと読んでくれたか? お前はおっちょこちょいだから・・・』と後半が隠されていて読めなくなっていた。俺は、少したじろいだ。  こいつは、俺がおっちょこちょいだと知っているのか?  もしかしたら、知り合いのイタズラだろうか? だが、確かに俺のメールアドレスから送られていることになっているのだ。迷惑メールの中には、俺のメアドをどこかで入手したのか、あるいはそういうプログラムがあるのか、時々、そうした手の込んだものが混じっている。だが、俺の知り合いや友人が、イタズラのために、わざわざそんなことまでするとは思えない。  では、なんだ? 焼き鳥を食べながら、あれこれ考えてみたが、やっぱりよく分からない。開いてみようかな、とも、思うのだが、今一つ怖い。   
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