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そして俺は・・・
メールを読み終え、思わず考え込んでしまった。
イタズラにしては、かなり面倒なことをやっている。かといって、これをそのまま信じることも、正直できない内容だ。あまりにも荒唐無稽だ。だが・・・。
俺がおっちょこちょいであることも、今、「日本一」にいることも、そして、そこに〇〇研究所の人たちがいることも、皆、指摘してあるではないか。あながち全くの嘘ということではないのではなかろうか・・・。
もしも、これが本当のことなら、俺はどうすべきだろう。
このまま店を出るとダンプカーにひかれるだろうか? そして、500年後に蘇生して、宇宙海賊になるのだろうか?
たしかにそれは面白そうだ。今の生きにくい毎日に比べれば、はるかに刺激的で有意義な人生かもしれない。でも、最後はブラックホール送りになる・・・。
では、店を出るとき、用心してひかれないようにしたら、どうなのか?
今まで通りのドジで間抜けな人生が続くばかりか・・・。
どちらが良い人生か。俺には、ちょっと答えが出せない。
残っていた冷めたつくねを一つ頬張り、ぬるくなった梅サワーを喉に流し込んだ。
何をごちゃごちゃ考えているのか。イタズラに決まってるじゃないか。こんなもの。ばかばかしい。
俺は、カウンターの中の大将におあいそを頼んだ。
そして勘定を済ませて、立ち上がった。その時、ちょっと足元がふらついた。瞬間、頭に、やはりメールは本物ではないか、という考えがよぎった。
それでチラッと研究所員のグループを横目で見た。皆、他愛なくバカ話に花を咲かせている。
「お気をつけて!」
大将の威勢の良い声が響いた。俺は、軽く会釈して店の入り口へと向かった。そして、引き戸に指をかけた。
俺は、ここでつまづくんだろうか? 分かっていてつまづくだろうか? まさか。分かっていてつまづくドジがどこにいる。・・・ここにいるかもしれない。俺は、やるなよ言われたことは大抵やらかす性分だ。自分で自分が怖い。
俺は、店の引き戸に手を掛けたまま逡巡してしまった。
「どうしました? 忘れ物ですか?」
大将が声をかけてきた。
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