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メモリーは椅子に凭れて眠っていた。顔を髪が覆っていた。シローはびっくりしたままに、
「誰?君は誰?もしかして、まさか!君はメモリー?まさか!君は誰だ?」
メモリーは目を覚ました。
「シロー、おはよう!」
メモリーは立ち上がった。シローはメモリーの可愛さに心奪われた。彼は胸のときめきと心臓の高鳴りの苦しさを感じた。
「本当にメモリー?」
メモリーはにこやかに、
「本当よ。私、メモリーよ」
シローはただ心奪われた。物語の設定上、メモリーを可愛く登場させた。実際のメモリーを見て、胸の高鳴りで苦しい程に心奪われた。シローは心奪われたままだった。メモリーはにこやかなままに、
「シロー、ありがとうね。私がここまで成長できたのは全て、シロー、あなたのお陰よ。ありがとう!シロー、あなたの心の美しさ、心の温かさに心から感謝するわ。ありがとう!心からお礼するね、ありがとう!」
メモリーはシローの正面から両手を回して口付けした。シローは心臓が壊れる程胸がときめいた。口付けはしばし続いた。シローの胸は焦げる程にときめいた。彼の心はメモリー一色に染まった。メモリーはくちびるを離すとほほえんだまま、
「シロー、ありがとう!あなたの心の美しさ、温かさに心から感謝よ。ありがとう!シロー、心から感謝のお礼が出来るって嬉しい!」
シローは苦しかった。胸のときめきは苦しさそのものだった。口付けはそれ程に胸を高鳴らせた。
「苦しいよ、苦しい!」
メモリーは心配して、
「シロー、苦しいの?」
「苦しいよ…」
「苦しいの?シロー、私に出来る事ある?」
シローは胸を押さえたまま、胸の高鳴りは耐えがたい程だった。
「小説書けないよ、書けない。苦しくて書けない」
メモリーはココロノアイ王国の王子の幸せな妻になる。それが物語の設定だった。しかしメモリーに心を奪われてしまった今、彼はメモリーを王子の妻として物語を進める事が辛くなった。心ではっきり否定する自分を感じた。出来る事なら自分の妻にしたかった。しかしそれをすれば、余りにせこく狡い自分を感じた。自分本意の恥ずかしい行為に思えた。王子の妻、自分の妻、どちらも苦しみだった。
「シロー、私どうすればいい?あなたの苦しみ、何とかしてあげたい。シロー、私の口付け、嬉しくなかったの?」
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