第1章

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 2ページ  メモリーは恋愛という意識に、胸を熱くせずにはいられない思いだった。相手は瞼に焼き付いていた。バラの花の色が独りでに変わる、それは心の色だと思っていた。恋愛ならどんな形でも良かった。とにかく三年以内、それが自分に許された絶対条件だった。儚く切ない恋、楽しく素晴らしい恋、どちらであれ真剣で命がけ、メモリーはそれを真剣に望んだ。恋愛、それを命がけで味わいたかった。ハロウィーンの二日前、客が帰った後にメモリーは小説家にこんな事を言った。 「先生、お願いがあるんですけど…」 「何だい?」 「一万円ほしいです。ハロウィーンの為に」  小説家に拾われてからこの二年、メモリーが要求したのはこれが初めてだった。小説家は快く受け止めた。 「分かったよ。メモリー、僕を名前で呼んでほしいよ。いつも言ってるけど…」 「ご免なさい。分かりました。シロー、お願い」  シローは機嫌良くにこやかに、 「メモリー、君を拾ったあの頃、僕は生きているのが嫌で、生きているだけで苦しかった。君を見たあの瞬間、僕の運命に電気が走った。苦しみこそ僕の運命、苦しさには何かがある。僕はそう思った。あの時の気持ち、今も忘れないよ」 「シロー、私を拾ってくれてありがとう! 心からありがたかったわ。心からお礼言うね、ありがとう! あの時ね、誰も私を見向きもしなかったわ」 「メモリー、僕こそありがとう! 君に出会えて僕は生きる目標を見つけたんだよ。メモリー、君が初めて喋った時、びっくりした。君の成長を見て僕は奇跡を見ている思いだよ」  メモリーは成長を心から喜んだ。 「シロー、私をここまで見守ってくれてありがとう。私がここまで成長できたのは全て、シロー、あなたのお陰よ。ありがとう! 私シローに心から感謝しているわ」 「メモリー、僕が今書いている小説だけどね、題名はハウスメルヘンのお店だ。主人公のキャラクターはメモリー、君だよ。君は未来のおもちゃの国から来た。恋愛体験の為にね」  メモリーはびっくり。 「えっ? まさか! シロー、知っていたの? どうしてそれを知ったの? 私が未来のおもちゃの国から来たって?」  シローもびっくり。 「えっ! 本当? メモリー、未来のおもちゃの国から来たの?」 「そうよ。どうしてそれを?」
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