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シローはびっくりしたまま、そして真剣なままに、
「偶然だよ。メモリー、聞いて。僕はこの作品を心から愛する事が出来るかもしれない。それまでの僕は枯れ木だった。影だった。今の僕は命の中に熱い血が燃えようとしている、そんな思いだよ。僕はこの作品に命を捧げるよ。それ程に燃えているよ」
「シロー、素晴らしいわ。命がけって素晴らしい! シロー、いいわよ。私を思いっ切り使って」
「ありがとう。だけどメモリー、本当に未来のおもちゃの国から来たの?」
「そうよ。私、未来のおもちゃの国から来たの」
「僕の作品はこうなっている。君は三年間という絶対条件で地球に留学するんだ。恋愛体験をするという目的でね。だけど周りから猛反対されて着の身着のまま、家出同然で地球に来たんだよ」
「シロー、ぴったし当たっているわ」
「信じられない程奇跡だよ。メモリー、君は今夜天使と出会う。そして乙女になるんだ」
「シロー、素敵! 今夜私、天使と会って乙女になるの?」
「そうだよ。僕の小説はそうなっている。もっとも、それが現実になるとは思わないけどね」
「シロー、聞きたいわ。あなたの作品」
「まだ完成してないよ。完成したら聞かせてあげるよ」
「シロー、確かに私は恋愛体験する為に地球に来たの。恋愛って、素晴らしい体験する事でしょう?」
「確かに恋愛は素晴らしい体験だろうよ。でもね、恋愛は心捧げる事だと僕は思っている。命捧げる事が恋愛だと思っているよ」
「シロー、それって素晴らしいわ」
「恋愛は素晴らしさと苦しさの両方を持っているよ。苦しい時もある。素晴らしい事ばかりじゃないよ」
「シロー、私不安。私、恋愛出来る?」
「誰でも簡単に出来るよ。心捧げる意志さえあればね。独身の僕が言っても余り値打ちないけどね」
「恋愛って、心捧げる意志があれば簡単なの?」
「メモリー、それがそうでもないんだ。恋愛程複雑で不可解なものはないと思う。こちらが良くても相手が駄目なら成り立たない。相手が良くてもこちらが駄目なら成り立たない。お互いが思い合ってなければ成り立たないんだ」
「シロー、恋愛は自由でしょう?」
「自由だよ」
「それなら私にも可能性あるかも。私、素晴らしい体験してみたい」
「メモリー、自分を大切にするんだよ。自分の素晴らしさを大切に出来ないとね、恋愛は長続きしないよ」
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