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「シロー、私、後一年しか時間ないのよ。私、どんな事があっても祖国に帰らなければならないの。三年以内に帰らないとね、私は裏切り者なの。それだけは絶対嫌。絶対帰る。私、恋愛出来ると思う?」
「出来るよ。メモリー、命がけの恋愛が出来るよ。メモリー、僕の小説ではね、君はココロノアイ王国の王子と恋愛する運命なんだよ」
「ココロノアイ王国って?」
「ココロノアイ王国ってね、厳しいけど素晴らしい王国なんだ。ココロノアイ王国の乙女たちみんなが、王子に憧れているんだ。メモリー、君はそこの女王なんだよ」
「シロー、もし私があなたに恋愛の意志を持ったらどうなるの?」
「メモリー、それは考えてない。僕の小説は君と王子の恋愛なんだよ」
「シロー、聞きたい。もし私があなたに恋愛の意志を抱いたら?」
「僕みたいな男をか? お薦めしないね。僕は万年貧乏、不治の貧乏。恥ずかしいけど、僕は大した才能もないのに小説家の道を生きている。僕は生涯貧乏だ。僕みたいな男は相手にしない方が賢明だよ」
「シロー、私今夜、乙女になるのよね?」
「そうだよ、乙女になる。僕の小説ではね」
「シロー、私に心捧げる意志ないの?」
「メモリー、僕みたいな男でよければ命捧げるよ。僕は大した才能ないけどね、小説は命なんだ。僕の全てだ。小説を書けないなら、僕は生きていても意味がない。僕は生涯貧乏だ。僕の貧乏は不治の病だ。僕みたいな男に心捧げてくれるなら、どんなに幸せだろう。僕は世界一幸せな男だよ。一つだけ約束するよ。僕は命がけで愛に生きるよ」
「シロー、私、一年しか時間ないのよ。素晴らしい恋愛出来ると思う?」
「メモリー、障害があればある程、愛は燃えるんだよ。苦しい運命程愛は燃えるんだよ」
「シロー、愛は理想を求めるわ。苦しければ苦しい程、理想を求める。苦しい運命より理想の運命を求めるはずよ」
「メモリー、それは違うと思う。愛は心の美しさを表現する事を望むんだよ。理想の運命に生きるよりね、心の美しさに生きる。それが愛だよ」
「シロー、本当にそう思っているの?」
「思っているよ」
「シロー、貧乏を嘆くよりね、貧乏を誇りに思う事よ。その方が輝いて見えるわ」
「メモリー、僕は貧乏を嘆いてないよ、自慢もしてないけどね。それよりメモリー、僕は飽く迄も君の素晴らしい恋愛体験と幸せを前提に、物語を進めるよ。君の幸せが何より一番だ」
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