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ロージンバッグを置いて
〇マウンド
背番号18のピッチャーがロージンバッグの粉をはたく後ろ姿。
N「ピッチャーに要求される微妙なコントロールは、汗で滑ればすぐに狂う。だからすっぽ抜けたりしないよう、ロージンバッグで手に粉をはたく。そしてピッチャーはそれを足下に置いてから代わりにボールを握るのだ」
〇千石マリーンスタジアム(夜)
車に向かう若い選手を取り囲んで一緒に歩いている記者達。
記者1「ナイスホームランでしたね」
記者2「キング争いはいけそうですか?」
野々村結子(22)は後ろの方から食い込もうとするが、他の記者に阻まれて選手に近づけずウロウロしている。
選手、小さな声でボソッと一言。そのままさっさと車に乗り込む。
記者達「なるほどね……」
結子「あ……あ……」
走り出す車に慌てる結子。手近な記者を捕まえる。
結子「何て言ったんですか? 彼」
記者3「知るかよ」
振り切って逃げようとする記者3を必死でつかむ結子。
結子「あ……あんたがデカ過ぎて近寄れなかったのよ、ウドの大木」
記者3「(カチン)……『オレの狙いはホームランより打率です』だよ」
結子「そ。(ホッとして)ありがと」
走っていく結子を見て、フンと鼻を鳴らす記者3。
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