ロージンバッグを置いて

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〇東都スポーツ新聞社 山倉(34)が新聞を広げて結子を怒鳴りつけている。 山倉「何だ、これは! 選手のコメントが他の新聞と全く違う。当人からも苦情がきてる!」 結子「スミマセン……」 山倉「それと、残念だが」  山倉、引き出しから原稿をドサッと結子に突っ返す。 山倉「こっちのはコラムには使えん」 結子「どうしてですか?」 山倉「切り口は面白い。だが痛烈すぎるんだよ。この業界、選手達に嫌われたら何もできんからな。了解のない限り、滅多なことは書きたくない」 結子「じゃ、選手達の都合のいいことしか書けないじゃないですか。読んでくれる一般観客の立場から書いた方が絶対……」 山倉「ボツといったらボツ。そんなことよりさっさとこの大ボラふきの記事、謝ってこい! 誠意をこめてな」 結子「……はい」 仏頂面で出ていこうとする結子。 山倉「ああ、それからお前の希望してたグレートチキンズの担当だがな、こんな調子じゃ当分延期だ」 結子「……」 山倉をにらみつけ、そして出ていく結子。 クタッと席に座り込む山倉にペットボトルを差し出す河埜(32)。 河埜「野々村って、グレートチキンズ希望してるんですか?」 山倉「あそこの風間監督は『球界のドン』だ。野々村をぶつけたりしたら内臓どころか首だってチョン、だ」   水をがぶ飲みする山倉。   肩をすくめてうなずく河埜。
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