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少し歩き、たどり着いた先のベッドに寝かせられる。
青年は俺のネクタイを緩め、ジャケットを脱がし、ベルトを外した。
「辛い思いさせて…ごめんなさい」
青年はそう言って俺の左袖を捲し上げると、ポケットから何かを取り出した。
「名前、聞いてもいいですか?」
「て…んま…」
必至に声を絞る。
青年はまた、顔を微かに歪めて笑った。
「僕は想太(ソウタ)って言います」
どうしてそんな顔をして笑うのか今すぐにでも問いただしたくなる。
でも今は、この体を何とかしたいという思いの方が何倍も強い。
「てんまさん。少しチクッとしますけど我慢してくださいね。すぐに楽になりますから」
「…え?」
そういうと想太は、俺の左腕に針のようなものを刺した。
「ん゙」
あまりの痛みに声が出る。
病院での注射とはわけが違う。
しかしその一瞬の痛みとは裏腹に、徐々に体が楽になるのを感じた。
火照りが鎮まりゆく感覚と、目が少しずつ霞んでいくような感覚。
そして視界に映る想太を見て、保っていた意識をそっと手放した。
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