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想太が起きたらどんな反応をすればいいだろうか。
穏やかに脈打っていた心臓はたちまち荒々しく鳴り出した。
「ん…」
想太は陽を避けるようにベッドに顔を擦り付け、やがてモソモソと頭を動かして起き上がる。
「……おひゃようこじゃいます…」
「お、おはよう」
声が若干上ずるも、とりあえず挨拶を返す。
きっと想太は おはようございます と言ったつもりなのだろう。
まだ夢見心地なのか口が回っておらず、かなり言葉を噛んでいたのでつい笑ってしまった。
一応起床したようだが、目が開いているのか開いていないのか分からない。
「想太、こっち来い」
少し横にずれつつ声をかけたが、どうやら体を起こしたまま寝ているようだ。
なんと器用なのだろう。
仕方なく、想太を抱きかかえてベッドに寝かせた。
「昨日から面倒かけてごめんな。色々世話してくれてありがとう」
眠る彼をそっと撫で、着替えをしようと後ろを向くと、なにやらシャツが引っかかるような感覚があった。
振り返ると、裾をしっかりと握っている。
「まじか…」
無理矢理引き剥がすわけにもいかず、起きるまで傍にいることにした。
社会人な上に今日も仕事なのだが、状況が状況なだけに仕方ない。
俺はベッド脇のテーブルに置かれた携帯電話をなんとか取り、欠勤の連絡を入れた。
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