第3話 依頼

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木漏れ日を浴びながら進むと、あの古い一軒家がポツリと現れた。 幻ではなかったんだと、ほっとした自分が妙におかしい。 幻であるはずはないのに。 今気がついたがドアホンがない。 ドアの横に木枠の窓があるが、カーテンもブラインドもかかっていなかった。 覗いてもいいのだろうか。少し躊躇したが、玉城はそろりと中を覗いてみた。 彼はいた。 斜め後方からなので表情は見えなかったがテーブルの前で果物ナイフを握り、ボーッとしている。 テーブルの上には青いリンゴが1つ。 しばらく青年はじっとしていたが、何となく渋々と言った感じでリンゴを手に取ると、右手に持っていたナイフでゆっくり皮をむき始める。 けれどすぐに彼はそのナイフを足元に落としてしまった。 “あ・・・・!” 居ても立ってもいられなくなり、玉城は素早く玄関に回り、慌ただしくドアをノックした。 けれどシンとして何の反応もない。聞こえないはずはないのに。 再びトトトトトンと慌ただしくノックする。 「こんにちは!新聞屋です!」 わざとらしく大声で言ってみた。 今度はガチャリとドアが開く。 柱にもたれかかるようにしてリクが顔を覗かせた。人形のように無表情だ。 「間に合ってます」 「サービスしますから」 そう言うと玉城はリクの横をすり抜けて勝手に中に入り込んだ。 土足でいいというこの家の造りが「壁」を感じさせない要因なのかも知れない。 玉城は自分でも不思議なほど当然と言った感じでテーブルに近づくと、リンゴを手に取り、ナイフで皮をむき始めた。
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