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玉城はその表情が可笑しくて思わず笑ってしまった。
「ああ、そこの画廊でそれと同じ女の子の絵を偶然見かけてね。綺麗な絵だったんで覚えてたんだ。まさかリクの絵だなんて」
「ああ、……そう」
リクは少し笑ってまた手を動かし始めた。
「その絵の女の子は知り合いなの? 綺麗な子だね」
“この絵の作者を見つけても決して自分から話しかけないでくださいね。”
田宮の言葉を思い出したが、まるでリクは危険な臭いはしない。
それどころか、なんとなく彼の側にいると気持ちが落ち着く。
玉城はわき上がってくる好奇心に任せて聞いてみた。
けれどリクはその問いに答えない。
「モデルとかいるの? それとも、ただ、イメージ?」
しつこくもう一度聞いてみる。
しばらくリクはじっとキャンバスを見つめていたが、やがてゆっくり首だけ玉城の方に向けて小さく言った。
「信じてくれる?」
「え? なに?」
「玉ちゃんなら、信じてくれるかな」
「だから、なにを?」
玉城が眉間にしわを寄せリクを見つめると、リクは少し躊躇う様子を見せたが、やがて決心したように口を開いた。
「彼女、とてもしつこいんだ。ほとんど毎日僕の所に来て、描いて欲しいって言う。
……他に行くとこがないんだろうから、しかたないんだけど」
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