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とにかく玉城は混乱していた。
捕まえた「真実」は、いきなりとんでもない化け物に変化した。
けれどそれがどんな化け物でも依頼者である人物に届けなければ仕事として終了しない。
『あなたの友人のお孫さんは死んでいました。その絵に描かれてるのはそのお孫さんの幽霊です』
……ありえない、あの坊主頭の窓口従業員に袋だたきにされそうだ。
では依頼通りリクの居場所を小宮に教えるだけにしたほうがいいのか。
でもリクは何と思うだろう。玉城を信頼して話してくれたのに。
小宮は結局自分でリクに少女の話を聞き出し、その幽霊話を信じても信じていなくても、彼を疑うだろう。
そんな話をする青年の精神をも疑うかもしれない。
悪くすればイカレタ画家がすでに少女に何らかの危害を加えたのかもしれないと勘ぐるかもしれない。
じゃあやっぱりリクの話は内緒にするべきなのか。
けれどそうすれば玉城のバイトは終わらず、少女の真実は永遠に家族に知られぬまま……
考えても考えても堂々巡りで全く出口が見つからない。
思い悩みながら玉城は無意識に来た道を戻り、また画廊の向かいのコーヒーショップのテラスに腰掛けた。
取りあえず小宮に電話を入れてみる。
待ちわびていたのか、小宮はすぐに電話に出た。
「ああ、玉城さん。連絡が無いので心配していました。どうですか?」
不安そうな小宮の声に罪悪感を覚える。
「すみません。画廊にはまだ彼は現れなくて」
嘘はついていない。
「そうですか。申し訳ないが、もう少しがんばってください」
「はい。……あの」
「はい?」
「あの絵の作者が見つかったらどうするんですか?」
「それは前にお話したように、あの絵の女の子と私たちが捜す女の子とが同じ人物かを確かめて、もしそうならば居場所を知っているか尋ねるだけです。それだけです」
「そうですよね。……その娘さん、元気だといいですね」
言った後、自分は大バカだと激しく後悔した。
「そうですね。それを願うばかりです」
心なしか、小宮の声が少し震えているような気がして玉城は居たたまれなくなった。
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