第6話 嘘

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「まさか……そんな酷いことを?」 「私はただ密着取材させてくれって言っただけなのよ。それも、あいつは一回OKして契約くれた。こっちだってそのつもりで計画してんのに。その時の記者が気に入らなかったのか知らないけど、いきなり白紙に戻されちゃってさ。穴を開けられて訴えたいのはこっちだわよ!!」 長谷川は鼻息を荒げて玉城に詰め寄った。 「いい? あいつは大嘘つきなの。少しでも信用したらバカを見るわよ!」 それだけ言うと気が晴れたのか、長谷川はくるりと向きを変え、また車道を無理矢理突っ切ってドスドスと反対側へ渡り、あの画廊の中に消えていった。 「確かに……。馬鹿を見た気がします。 ほんと……」 玉城はぽつりと独り言を言ってみた。 そして、何か決心したようにゆっくり立ち上がる。 さっきまでの迷いや狼狽えはその表情には無かった。 少し怒りを含んだその目は、真っ直ぐあの路地に向けられた。 思えば『騙される』事から始まったように思う彼のこのところの不運。 自分の都合や私欲のために平気で人を騙す人間に辟易していた。 そんな人間は心にきっと闇を持っている。 小さな嘘を平気で重ねる人間は、大きな嘘も平気で隠し通そうとする。 玉城はあの家に向かった。 空は次第に雲に覆われ初めていた。 まだ日没にはほど遠い時間だというのに、どんより薄暗い。 ケヤキの木がザワザワと、陰口を言うように乾いた葉音を立てた。 もう一度真実を聞いてみよう。 その一心であの家を目指した。 家が見えてきた。 けれど、その遙か手前で玉城は慌てて太いケヤキの影に隠れた。 ちょうどリクが家の中から出てきたのだ。 薄地のウインドブレーカーを羽織り、手には白い手袋をしただけで、何も持っていない。 気乗りのしないお使いを頼まれた子供ような表情をして、リクは玉城が来たのとは反対方向へ向かって歩き出した。 何処へ行くのだろう。 負の興味が沸いてきた。 玉城は充分距離を取り、気付かれないようにそっと後をつけた。       ◇  
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